八丁堀 鮨處 司

東京都中央区八丁堀1丁目8番1号

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其の二十三

時間の太鼓

江戸城で昼夜12刻を打つのがすべての標準時である。

太鼓を打つ役目はお城坊主。


その昔は鐘を叩いていたそうであるが、鐘は騒々しいというので太鼓に代わった。

登城その他、公儀の時間はすべてこの太鼓に依らなければならない。


明け六つの太鼓が鳴ると、すべての見附の門を開け、暮れ六つの太鼓が鳴ると、すべての見附の門を閉めてしまう。

町内の木戸は夜の四つに閉めることになっていた。


面白い(?)のは麹町のように見附の内側にある町家などは、暮れ六つの太鼓が鳴ると、もう出ることも入ることも出来なかったので、ひどく不便であった。

親の急病とか親戚に不幸などのあった場合は、住所、氏名、身元などを書きつけて、特に出入りを許される。

それも外濠の方の出入りは幾分緩やかであったが、内濠は非常に厳重であったらしい。


また桜田見附を入って、和田倉門へ抜けようとする者がその途中で、暮れ六つの太鼓を聞くと、後へ戻ることも先へ行くことも出来ないで、丸の内に閉じ込められてしまう。


そこで暮れ六つの太鼓だけは“きざみ”を入れて打つことになっている。

“きざみ”を入れるとは、ドンと1つ打って、2つ目を打つまでに“どどどどどど”と絞って又ドンと打つことを言う。

暮れ六つの太鼓に限って、どんどどどどどど、どんどどどどどどどという打ち方をしたので、6つ打ち終わるまでにはかなりの時間があった。


小さな子供でも暮れ六つの太鼓が鳴るときに桜田見附を入っても6つを打ち終わるまでに鍛冶橋見附まで歩いていけた。


時の鐘は“鐘9か所”と言って、江戸中に公認されたものが9か所あった。


大昔、たしか中学か高校の理科の時間に習ったことは、音は縦波で音速は(空気の成分や気圧などにもよるが、まあ大体)C = 331.5 + 0.6T(メートル/秒) Tは摂氏温度(℃)だったような。

そうすると気温が15℃のとき、音速はおよそ340メートル/秒となる。

鐘9か所の1つ(例えば石町(こくちょう)の鐘)から10キロメートル離れたお寺のお坊さんは、江戸城の太鼓の音を聞いてから30秒後に鐘をゴーンと打っていたのであろうか。

どのようにシンクロさせていたのか、いないのか、興味は尽きない。