其の二十一
江戸の火事
江戸時代には“火事は江戸の花”と言われたくらいで、頻繁にほとんど毎日のようにあったらしい。
なかでも代表的な大火は明暦3年正月18日(1657年3月2日)と明和9年2月29日(1772年4月1日)の2つである。
江戸には火事が多かったために、町人などは自分の財産の安定などはなかなか得られない。
いつも火事のたびに脅かされ通しで、おちおち眠ることもできなかった。
大店などは穴蔵を掘って、そこへ貴重なものをしまっておく。
これは比較的安全である。
穴蔵などのない普通の町家では、上野の寛永寺、芝の増上寺などに金を預ける。
これには100両あたり年1分くらいの利子をつけてくれる。
安全第一ということで多くの人が預けていた。
寺はそれをどのように運用していたのであろうか。
余談となるが、金(ゴールド)の溶解温度は1064℃である。
現代では耐火金庫はJISなどにより細かく規定されているが、基本的にはある一定の時間内に消防がきて消火してくれることを前提にしている。
金の延べ棒の刻印が溶けてしまい、純金かどうかが分からなくなることは儘あるようである。