其の十八
加賀鳶(かがとび)
加賀100万石の抱え火消をいう。お手古(てこ)ともいう。
本郷5丁目の上屋敷の八丁四方の火消に備える。
このほか親戚、菩提寺、加えて将軍家学問所の聖堂(今の湯島聖堂)の火消も勤める。
その頭を目代(めだい)といい、雲に大稲妻の色ざし半纏の上に鼠色の革羽織を重ね、鼠色の股引、うこん白紐の脚絆、紺足袋、鼠色の頭巾、草鞋を穿き、手鍵を持つ。
平鳶も雲に大稲妻の色差し半纏、めくらじまの股引、白紐の脚絆、黒足袋、茶色の革羽織、草鞋穿きの足固めで、五尺の鳶口を持っている。
いずれも身の丈六尺(180cm)ばかりの顔色たくましい大男揃いである。
1番手、2番手、3番手の3組があって、1組20人が2列になり、先頭に目代、小頭役、次に手代り共4人の纏持ちで、纏は太閤からの拝領物というので、警固の武士がついている。
次は騎馬の武士で、これには馬脇の侍が従う。
それから梯子、水桶、竜吐水(江戸時代に発明された消防ポンプ)などの物持中間一組がついている。
お手古は“六方ぶり(歌舞伎などで伊達や勇壮なさまなどを誇張した歩き方)”で歩く。
髪も半締で、髷は海老の腰のように刷先をみごとに散らし、鬢を抜上げてすき額にしている。
これは他に類がないので加賀鳶髷(かがとびまげ)と言った。