其の十二
蔵米取り(くらまいどり)
自分が持っている石高の取れる領地を与えられていて、そこから定められた石高を取るのを知行取りという。
蔵米取りというのは、領地を持っていないで、定められた石高を蔵前の札差から取るのを言う。
従って、知行取り方は定められた石高よりも余計に取ることも出来るし、またその年の出来によっては少ないときもある。
蔵米取りの方は、その年の米の出来の良し悪しには何の関係もない。
知行取りの方は女手のようなものでも、知行所の百姓の娘が出てくるから無給であるばかりでなく、かえって娘の方から志願してくるくらいである。
それは屋敷奉公が今の女学校以上の教育と思われていたので、奉公を無事に勤めあげて故郷へ帰れば、相当のところへ嫁に行かれた。
この知行取り、蔵米取りの別は以前からの習慣で定められているので、途中で変更するわけには行かないことになっている。
概して知行取りの方が得のようにみえるが本当のところは分からない。
蔵米取りが札差から貰う時には、その定められた石高の3分の1を米で貰い、3分の2を金で貰うことになっている。
それ以上を金で貰う時は、札差と応相談ということになる。
3分の2というのは原則であるが全部を金で貰うことはできない。
なぜなら、札差は蔵米取りの武士から食う米が無いと言ってこられたら、米を与えないわけには行かなかったからである。
従って札差の方も心得ていて、どの屋敷は何人、どの屋敷は何十人と、各屋敷の人数と1年に食べる米の量を知っていて、それは金にかえてはくれないことになっていた。
定めとしては11月に蔵米取りの者に全部を与えることになっているが、大量の米を保管する場所にも困るし、元禄の頃(1688~1704年)から御借米と称して春に25%、夏に25%、11月に50%を渡すことになった。